木刀の種類

~堀之内登製作所 訪問~


 木刀は、代表的な木製武器のひとつです。刀を忠実に再現した木製の模造刀のため、真剣の代用として稽古で使われることもあれば、素振り等、日々の稽古の鍛錬用として使われることもあります。また、非常に軽い木刀の場合は、正確な打ち方を訓練するために使われることもあります。合気道や剣道、居合道の道場では、相対的に「伝統型木刀」と呼ばれる木刀を使用することが多い一方で、剣術や古流、古武道の道場などでは、その道場の流派によって異なる独特な動きや技に合わせ、その流派に適応する特別な仕様の「流派木刀」と呼ばれる木刀が使われています。
宮崎県都城市に堀之内登製作所に併設された展示館では、1923年の設立当初からこれまで製作してきた数々の木製武器のモデルが展示されています。全世界で、今現在、流派木刀も含め何種類の木刀が存在するのかは定かではありませんが、少なくともこちらの展示館では100種以上の木刀を見学することができました。


堀之内登製作所

【堀之内登製作所】

1923年頃、堀之内源助氏によって木刀製作が開始されました。当時は多い時で30人ほどの木刀職人が働いていたそうです。堀之内氏のクオリティ高い木刀はすぐに世間に知れ渡り、1927年には、陸・海軍・満州鉄道指定工場となりました。そして、戦後の1969年、堀之内登氏によって「堀之内登製作所」として法人化され、1984年には、他、都城市に残る4つの木刀工房からなる「都城木刀製造業共同組合」が結成されました。同じ頃、堀之内登氏は政府から「伝統工芸士」として認定され、現在では、登氏の息子である修氏に受け継がれ、12人程の職人とともに、毎日250本近くの木刀を製作しています。


堀之内登製作所に隣接する木刀展示館

堀之内登製作所に隣接する木刀展示館



堀之内登製作所の木刀コレクション

工房や職人が授与された表彰状の数々

左側の写真:工房で展示されていた木刀の一部 / 右側の写真:工房や職人が授与された表彰状の数々

【木刀の形状】

今日、私達が見かける木刀の大部分は、「普及型木刀」、または「特製型木刀」とよばれる形状です。どちらも反りや重さはほぼ同じですが、「切先」「峯」「柄頭」の形状が異なります。普及型木刀は、主に剣道、合気道、そして居合道のごく一部の方に愛用されていますが、今日、使われている木刀の形状(太さや重さ、長さ、反りなど)は100種以上存在していると言われています。柳生新陰流や警視流、鹿島神流、香取神道流流などの伝統ある流派では、流派それぞれの発展にともない独自の木刀が出来上がり、流派木刀として存在しています。いくつかの流派の道場によっては、使用する合気道家それぞれの体型に合わせて重さや長さなどを予め指定してくることもあるそうです。

木刀は、比較的早く製作できる反面、その形状についての正確な知識と製作道具を使いこなす職人芸が必要となります。柄から切先までの太さ、鎬(しのぎ)の位置、峯の形状、反りの知識など、木刀は非常に複雑で、それら木刀の特性を全て把握した上で作り上げることができるのは、全国でみても九州の木刀職人だけと言っても過言ではないそうです。今回は、木刀の一番大切な要素でもある「反り」「切先」「」「柄頭」についてご紹介したいと思います。

【反り】

木刀の反りの種類

「反り」 は木刀の中で一番重要な部位であり、「反り」の位置によって全体の長さや重さ、バランスなど、全ての要素に影響を及ぼします。なお、「反り」は全部で4種あり、「直刃(すぐは)反り」「京反り」「腰反り」「先反り」があります。一般的に、普及型木刀の「反り」は中央にあり(職人によっていくつかのスタイルが存在しています。)、「京反り(4分反り)」と呼ばれ、全体が一様に反っています。一方で、古流木刀では、「直刃(すぐは)反り」「京反り」「腰反り」「先反り」など様々な種類の反りの形状があります。

【切先】

木刀の切先の種類

一方、木刀の先端にあたる「切先(きっさき)」は、「反り」に比べ、その形状は木刀の動きへの影響度はさほどなく、 木刀の美観、品位を表す部位ともいえます。. 一般的な伝統型木刀の切先の仕上げには、「小切先」「大切先」、ものによっては「特大切先」があります。そして、これら切先の仕上げを斜めに切り落とすか平らに切り落とすかによっても、木刀の先端の重さや全体の重心も変わってきます。 「岩間流木刀」は、切先が「切りっぱなしの型」とも言われており、その平らな切っ先に向かって、柄から太いままの力強いバランスが保たれており、非常に重い木刀のひとつとして知られています。また、切先の仕上げは、前述の「小切先」「大切先」「特大切先」のほか、 “「剣道型」“や “「関東型(東京型)」「うの首」“などの仕上げも存在します。これらの仕上げは古流木刀で使われることが多いと言われています。

【峯】

木刀の峯の種類

峯の形状は、主に 「平峯」「剣峯」「丸峯」「行の峯」の4種類があります。一般的な伝統型木刀は、「平峯」か「剣峯」の仕上げで作られています。峯の上部が平らくなっている「平峯」と山形に尖った「剣峯」では、どちらの峯の形状にしても木刀の動きに対しての影響はあまりありませんが、「丸峯」と「行の峯」は木刀の重量が軽量になるため、木刀を使った動作に影響を及ぼします。そして、「平峯」と「丸峯」の中間ともいえる形(卵型の上を切り落とした形)も存在しており、側面は「丸峯」のような曲線を描き、上部は「平峯」のように平たくなっています。 この形は、「岩間流木刀」の前身の形状でもあり、 (星道ショップでは「武産木刀」として販売)今日の「岩間流大刀」は「平峯」の形へと変遷を遂げています。

【柄頭】

木刀 柄頭


「柄頭」 は、木刀の切先とは正反対の端(持ち手側)をさし、形状は 「平」「半丸」の2種類しかありません。古流木刀の大部分の仕上げは、この「平」になっていますが、握りやすさの観点から、最近では「半丸」仕上げのほうが好まれる傾向があります。

【厚み】

総合的に木刀の厚みの種類は、柳生流のような細い木刀、一般的な普及型大刀、そして警視流のような太い木刀の3つに分類できるでしょう。気温や湿度の影響で木材が曲がるのを避けるために、木刀を細くするのには限界があるのに対して、太くするにはほとんど問題はありません。もちろん、ある程度の重量以上になると、それは木刀ではなく素振り刀のカテゴリに分類されます。いくつかの古流の道場では、50kg以上の素振り刀を使っているところも存在しています。

【鍔】

木製鍔付き木刀


木刀に鍔をつける場合は、プラスチック製、革製、木製の鍔をつけるのが一般的です。木刀に鍔を固定するには、必然的に鍔止め用の境界線のような段が柄部分に刻まれます。それとは反対に、木刀に鍔を付けない「鍔なし」、または「略式」と言われる仕上げの場合は、柄から刀身の部分にかけてに鍔止め用の段が刻まれることがありません。伝統型木刀を除いて、古流木刀の場合は、「鍔なし(略式)」が一般的です。

【樋】

樋入り木刀



また、普及型木刀は刀身に沿って両面に樋(溝)を入れることができます。この樋入り木刀には主に二つの役割があり、一つは、居合に精通する稽古が可能となります。居合道で使われる居合刀や真剣に樋が入っていることから、樋入りにすることで、居合に精通する稽古をすることが可能になるのです。樋を入れることで、刀身をふった時にヒュッヒュッと風を切る音が出るのが特徴的です。そして、二つめの役割は、木刀の重量を軽くすることができます。なお、今日では、普及型木刀の樋入りは存在しても、古流木刀の樋入りは存在しないと言われています。